水田土壌の生物的鉄酸化機構の解明に向けた
新奇微好気性鉄酸化菌に関する研究

渡邉 健史
(名古屋大学大学院 生命農学研究科 生物機構・機能科学専攻 助教)

2013年12月4日水曜日

師走

ずいぶんと久しぶりの投稿となってしまいました。。。

9月の日本土壌肥料学会名古屋大会を無事に終え、また、学会後の若手の会の引率役をこなし、その後、放心状態がしばらく続いておりました。

10月には科研費の申請、そしてインドネシアで開催された東・東南アジア土壌科学会連合第11回国際会議への出席など、ここでご紹介すればよい話題もいくつかあったのですが、あれよあれよという間に時が過ぎてしまい、今日に至ってしまいました。

11月に入ってようやく実験に集中して取組めるようになり、モチベーションも回復してきたところです。
気がついたら今年もあと1ヶ月。研究の方は当初の予定よりだいぶ遅れていますが、がんばって行きたいと思います。

ところで、
今回の助成とは関係ありませんが、この度、2つの論文が受理されましたので、ご紹介したいと思います。

"Analysis of [FeFe]-hydrogenase genes for the elucidation of a hydrogen-producing bacterial community in paddy field soil"
Ryuko Baba, Makoto Kimura, Susumu Asakawa, Takeshi Watanabe
FEMS Microbiology Letters
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1574-6968.12335/abstract

この論文は、ヒドロゲナーゼ酵素遺伝子をターゲットにして水田土壌の水素生成菌群集の多様性の解析を試みた論文で、大学院生と一緒に行った実験です。
水が張ってある水田土壌のような嫌気的な環境では、有機物が微生物によって分解される過程で、中間代謝産物として水素が生成されます。その生成と消費反応は有機物分解を律速する重要な反応であり、水素生成者と消費者の関係を明らかにすることは水田土壌の有機物分解を理解する上で必要不可欠です。この論文は、水田土壌の水素生成菌群集について初めて解析を試みた実験であり、今後、水素生成活性と群集の動態、水田土壌中の有機物分解との関係などの解析に繋げていければと思っています。

"A reduced fraction of plant N derived from atmospheric N (%Ndfa) and reduced rhizobial nifH gene numbers indicate a lower capacity for nitrogen fixation in nodules of white clover exposed to long-term CO2 enrichment"
Takeshi Watanabe, Saman Bowatte, Paul C.D. Newton
Biogeosciences, accepted
(現在は、Biogeosciencesに掲載される前のBiogeosciences Discussions, 10, 9867-9896にて公開されています。)

2011年に3ヶ月ほどニュージーランドのAgResearch研究所に訪問する機会があったのですが、そこで行った実験をまとめた論文が受理されました。
AgResearch研究所では、羊の放牧草地を対象としたFACE実験が行われています。FACEとは、"Free Air CO2 Enrichment"、日本語では「開放系大気CO2増加」の略であり、人為的にある生態系のCO2濃度を上昇させて、植生や物質循環などに及ぼす影響を評価する試験です。AgResearchだけでなく、世界各地で行われており、日本ではつくばで水田を対象に試験されています。http://www.niaes.affrc.go.jp/outline/face/
マメ科植物の根には、根粒菌という大気中の窒素を固定する菌が共生し、植物、そしてその生態系に窒素を供給する重要な役割を担っています。この論文では、マメ科牧草の一種であるシロクローバーとその根に共生する根粒菌が、大気中のCO2濃度が上昇したときにどのような影響を受けるのかを解析した論文です。3ヶ月という短い期間で行った実験で、また普段とは異なる研究テーマで、無事、終わらせることができるかどうかかなり不安だったのですが、こうして論文にすることができ、ホッとしています。


今年は、国際科学技術財団の助成、やさしい科学技術セミナー、学会、奨励賞、論文受理など非常に充実した一年でした(後半失速しがちでしたが)。来年もさらに充実した一年になるよう、しっかり一歩ずつ進んでいきたいと思います(まだ12月に入ったばかりなのにまとめてしまい恐縮ですが)。


3 件のコメント:

  1. 論文や学会での発表といった学究の道につきものの活動について、常々疑問に思っている事があります。
    論文が完成し発表にこぎつけた喜び、充実感はさぞ大きいだろうと思うのですが、その後の研究生活に具体的な形でどのように跳ね返ってくるのですか?
    真理や謎に一歩近づいた喜びそのものがモチベーションなのか?その後の波及効果として大きなものがあるのか?研究者を続けるのってしんどくないですか?

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      研究に対する考え方や位置付けは人それぞれなので、あくまで私個人の意見ですが、前者(謎に一歩近づいた喜び)の考え方に当てはまるでしょうか。
      現在行っている研究や今回紹介した論文の内容が、私たちの生活に役立つ応用技術に直結するわけではありませんが、ある一つの現象やメカニズムを理解するのにわずかではあっても進展があり、それを論文という形にできたことは嬉しいです。
      ですが、これで終わりではないので、ここからさらに展開して思い描いた形が作り出せればと思ってます。
      たしかに、しんどいと思うことや何をやってもうまくいかないことは多々ありますが、その分うまくいったときはより達成感や充実感がありますし、それで何とかやっていけてるのだと思います。

      削除
    2. お返事いただき恐縮です。わたしは、飽きっぽい人間なのかもしれません。研究生活にあこがれる反面、同じような事を長く続けるのはしんどいなあ~と思います。
      研究者向きの性格ってあるんだなあと思いました。
      研究頑張ってください。

      削除